2.店舗物件探しのポイント
店舗物件探しの際に尋ねられるポイントを整理すると以下のようになります。
- 賃料
- 場所(最寄駅・徒歩時間)
- 面積
- 階数
多くの人が飲食店を開業する際、人気駅の好立地、広い間取り、1階でリーズナブルな賃料を希望すると思います。
しかし、そのような店舗物件を探し当てることは不可能と言っても過言ではありません。
人気駅の好立地ならば、高い集客力が期待できるので空き店舗も少なく賃料は当然高くなります。また、間取りが広ければそれに比例して賃料は高くなり、さらに1階では空中階の2倍程、賃料が高くなります。つまり、場所、面積、階数で好条件を期待すればするほど、賃料は必然的に高くなってしまうのです。
では希望の店舗物件を探し当てるためには、どうすればいいのでしょうか?
それは、以下のポイントに力を注ぐことで、解決できるはずです。
出店するための条件を限りなく具体化する
出店における自社(または個人)の個性をしっかりと確立してください。
例えば、友人、知人を主なターゲットとして考え、一見さんはあまり期待しないとします。この場合の条件とは、友人、知人が集まりやすい場所、間取りになるはずです。必ずしも人気駅の好立地である必要性はないはずですし、語らいの場となるならば広い間取りよりもむしろ一体感がとれるコンパクトな空間のほうが適しているかもしれません。この一例のように、まず店のコンセプトを明確にした後に、出店条件を整理することによって店舗物件探しがスムーズに行えると思います。
では、賃料、場所、面積、階数について、もう少し掘下げて説明していきます。
賃料
賃料を決める場合、まずあなたは開業したらその店でどれ位の売上を考えていますか?又店は最低何人で運営するのですか?あなたの給料は開業時いくらで、店が軌道に乗ればどれ位の給料を希望しますか?
売上を予想できないと全て決まりません。そして、その売上に見合った賃料を計算する必要があります。ここで言っている賃料とは名目上の賃料(名目賃料)ではなく、実質支払う賃料(実質賃料)を意味しています。
その実質賃料には、
- 名目賃料
- 保証金(敷金)等の金利
- 保証金の償却分
- 前払い賃料としての権利金
- 礼金
- 共益費・管理費
- 契約更新料
などがあります。ショッピングセンターなどのビルイン店舗の場合は、販促費、駐車場割当などの費用がかなり発生します。場合によっては名目賃料と同額程度となることもあるので注意してください。実質賃料の算出は、面積と密接な関係があるため、面積のトピックスで詳しく説明します。
面積
店舗面積を決める場合に、ほとんどの方が賃料から逆算していると思います。しかし、店舗面積は、売上から逆算して決めるべきです。予算があれば以前勤めていた店等参考にして同じ面積を借りるのがよい方法です。しかし、予算が付いてこない場合は、予想する売上から最低どれ位の面積が必要なのかを考えるようにしてください。
次に重要なポイントは、1.で説明した実質賃料は実効(有効)面積ではなく、契約面積に基いて支払われるというところです。使える部分は狭くても、賃料は契約面積で支払わなければなりません。特にビルの場合、階段・通路・機械室など共有部分を含むことが少なくありません。よって実質賃料の計算は当然実効面積で行わなければなりません。
では、坪あたりの月額実質賃料を求めてみましょう。共有面積負担は、「含み率」という割合表示を使用します。仮に契約面積が100坪で共有面積が20坪の場合、含み率は20%になります。この含み率を利用し、店舗Aにおける月額実質賃料を求めると以下のようになります。
場所(最寄駅、徒歩時間)
冒頭で述べたように、住宅地ではダメなのか、駅から何分迄か、人通りがどれ位必要なのか、など店舗の出店場所という側面から条件を具体化することが重要です。
その条件が決まったら、該当すると思われる店舗物件の下見をします。その際の調査ポイントは、以下の2つになります。
- 人通り(通行量調査)
- 店舗の履歴
通行量調査について、条件で上げた必要な人通りが満たされているかどうかを検証します。時間帯別、男女別、世代別にチェックをしていきます。店のオープン予定時刻の少なくとも1時間前から開始します。できれば土日・平日別、雨・晴れの日別でも調査してください。
その集計結果としてどの時間帯でも成人女性の割合が多く、特に夕方にその傾向が顕著であることがわかったとします。この結果と自分の店のコンセプトとを照らし合わせ、場合によっては店のコンセプトを微修正したり、または出店場所として断念する、といった判断材料になるはずです。事前に通行量調査をしっかり行っていれば、開業後に再度調査を行うことによって増減傾向を掴むことも可能になります。また、ロードサイド店の場合は、車両の通行量もしっかり記録するべきです。
通行量調査は専門に行っている会社に依頼するのもいいかもしれません。
つぎに店舗の履歴について、不動産事業者や物件の周囲の人にその店舗の履歴を尋ねてみたいものです。人通りが多く、駅近の1階にも関わらず、ころころ店が変わっている場合は、何らかの問題があると考えるべきです。先日、不動産事業者の方から興味深いお話をいただきました。新宿のとある一角で、かなりの人通りの1F店舗にも関わらず、長い期間繁盛した店が一軒もありません。中には大手飲食チェーン店も含まれていたそうです。何十年もその土地を見てきた不動産事業者が言うには、至近に公のビルがあり、みんな足早にそこへ行き来しているだけで、ほとんどの人が立ち止まらないのが原因のようです。ひょっとすると他にも原因があるかもしれませんが、いくら人通りが多いからといっても、飲食店として必ずしも繁盛するとは限らないという良い一例だと思います。
場所(最寄駅、徒歩時間)
賃料等が路面店に比べて安く、好立地も確保しやすい空中店舗(2階以上)について説明します。お客様にわかり易く、来店し易い店舗を作れば空中店舗でも十分成功が可能と思います。店舗の選び方、営業方法次第では、繁盛店も可能です。空中店舗を探す際のポイントを以下に示します。
- 道路から店舗の中が見える(何の業種の店舗かわかる程度)
- 看板がわかりやすい場所に設置できる(1F入口付近が望ましい)
- 店舗の入口がわかり易い(専用階段が望ましい)
- 階段に店舗の広告物、イメージが出せる(複数店舗や住宅との共用階段で、広告物に規制がある場合は避けた方が良い)
ちなみに、大手飲食チエーン店が空中店舗でも成功している理由は、初めて店に入る人でも、この店はどのような店であるかを、お客様がわかっているからです。お客様が2階等に上がることに不安を感じさせるような店舗では、たとえ開業しても失敗することが多いです。